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110717 混沌の丘

  • 2011/07/23 21:22
  • Category: 小説
 定例会のIGvsGK戦をモチーフにした短編小説です。

 多少でもラクのアレ感が伝わればよいかなと思います。

 続きからどうぞ。


 そこは、昔ながらの緑あふれる美しい庭園であった。脇に建つ屋敷も趣があったが、中は酷く荒れ果てている。かつてこの一帯を支配した貴族の住処として使われていたこの屋敷は今、軍の司令部として使われているのだ。
 タンクレート・ミヒェールゼン大尉はそうした静かな貴族の遺産を、落ち着かない気分で眺めていた。少し離れた場所にいる司令部付きの将校らは小声で囁き合っているが、何を話しているのかは全くわからない。
 別の将校がミヒェールゼン大尉に近付き、位置につくように促した。政治局員がその様子を監視している。黒い喪服のような政治局員の制服についた装飾が、太陽光に反射して眩しかった。
 「大尉、時間です」
 「……」
 ミヒェールゼン大尉は無言だった。大尉はしばらくの間、ポケットを弄っていたが、感情のない声で将校に催促した。
 「君、煙草はあるかね」
 大尉の目の端で5人の兵士が儀杖兵のように整列した。将校は無言でシガレット・ケースの蓋を弾いて開け、大尉に差し出す。しかし大尉がその中の1本を摘む前に、カチンと音を立ててケースの蓋を閉じた。
 「残念ですが」
 では何故差し出したのか、とミヒェールゼン大尉は苛立ちを覚えたが、自分の後釜になるであろう将校の目を見て考えるのを止めた。残念なことに将校は政治局員に背を向けていた。何が起きていたか、政治局員にはわからないだろう。


 そうだ、もはや誰にもわからないだろう。



 時間は5日前に遡る。

CA3A0168a.jpg


 ミヒェールゼン大尉の戦闘団は、砂上の異端神殿を爆破しようとしていた。見渡す限りの砂漠で、小さな岩山はあたかも大海原に孤立する無人島のようであった。
 大尉がこの神殿を見つけたのは偶然だった。配下の偵察型センチネル部隊が逃走するオルクを追撃するうちに、蜃気楼の中から現れた岩山を発見したのである。
 それ以後、センチネルからの通信はない。3機の2足歩行戦車にはいずれも長距離無線機が搭載されており、例え攻撃を受けて小隊が全滅したのだとしても、「攻撃された」ぐらいの短文は残せる筈だ。
 それが故に、ミヒェールゼン大尉は自分の戦闘団を神殿から離れた場所に待機させていた。

CA3A0157a.jpg

 「人影はおろか、残骸すら見えません」
 副官が着弾観測用の砲隊鏡……通称『カニ目』から目を離しながら、大尉に報告した。
 大尉の指揮分隊は8人編成だった。副官と当番兵、無線手にプラズマガン射手、3人のアドバイザーと、大尉である。
 戦闘団レベルであれば、最前線で指揮を執る将校は珍しくない。大尉もその口である。しかし、彼の同僚は皆、臆病であった。出世のことしか考えておらず、いつもミヒェールゼン大尉の足を引っ張るか、手柄を横取りしていた。
 ミヒェールゼンにとって、それは赦せないことだった。
 副官は地図とにらめっこしていた。
 「どうも様子が変です。この辺りは、地図上ではオアシスだったはずですが……」
 オアシスというものは通常、砂漠のど真ん中に存在する緑豊かな水場のことを指したはずだ。しかし、目の前にあるオアシスは枯れ果て、残骸となっている。その脇で、岩山は明らかにまがまがしいオーラを放っていた。
 「乾くにしては早いな」
 「あの神殿が怪しいと思われます」
 大尉と副官は神殿の爆破で意見が一致したが、生憎、花火筒の類は切らしていた。爆薬になるようなものはない。
 「司令部に連絡して工兵を寄越してもらおう。我々は工兵の到着まで異常がないかを監視する」
 混沌は跡形も無く消し去るのが一番良い。大尉は知っている。義理人情からそれを怠ったせいで、いくつかの都市に舞い降りた惨状を。
 だが、大尉の行動は最初から間違っていたのである。


 突如として、戦闘団の全面に3人の装甲兵が現れたのだ。
 「何だあれは」
 ミヒェールゼン大尉は怯んだ。装甲の表面が、銀色に鈍く輝いていたからである。
 「“鈍色の騎士”……」
 一瞬で、指揮分隊は真っ青になる。思考回路が停止してしまったようだった。
 “鈍色の騎士”。グレイナイトと呼ばれる、悪魔殺しとして有名な特殊戦団だ。混沌への征戦に徴発されたいくつもの連隊が、『汚染除去』の名の下に粛清されたと、皆、噂に聞いたことがあった。
 「ということは、わ、我々は……?」
 「早く無線で確認を取れ」
 無線兵が背中のヴォクス・キャスターに望みを賭けるが、無線機からは雑音ばかりが響いていた。
 「反応はありません」
 静かに前進する“鈍色の騎士”は銃口をこちらに向けていた。
 大尉の額に汗が湧き出る。
 「……撃て」
 「た、大尉、しかし……」
 「誤射だ。仕方なかったんだよ」
 大尉の唇は震えていた。我々が何をしてしまったのかは知らないが(恐らく、この神殿を見つけてしまったことが問題だったのだろう)、このまま座して確実な粛清を待つより、“鈍色の騎士”を殺して証拠を隠滅する方が、まだ生き残る可能性はある。
 「連中、俺たちを排除するつもりだ。協力を要請するなら、無線連絡を入れているはずだからな」
 マイクを取ると、大尉は射撃命令を下した。

CA3A0169a.jpg

 戦闘団唯一の戦車、レマン・ラスが発砲したのをきっかけに、戦闘団のありとあらゆる火器がグレイナイトに注ぎ込まれる。
 次々に爆発する砲弾、視界を埋め尽くす赤いレーザー、うず高い山となる空薬夾。そのすべてを費やしても、グレイナイトは硝煙の中から無傷で現れた。
 「マズい。もっと撃ちまくれ。弾が尽きるまで撃て」
 大尉の目の前で、空気が裂けて巨大な人型の戦士が現れる。ドレッド・ナイトだ。
 大尉はそのような兵器が存在することを知らなかった。接近してくる“鈍色の騎士”達が、奇怪な火の玉(とでもいうべきもの)を連続して放つと、指揮下の山岳猟兵達が悲鳴をあげながら黒い塊となる。
 ドレッド・ナイトがレマン・ラスに突撃し、砲塔を切り裂いて爆発させると、戦闘団の士気はあっという間に崩壊した。たかだか数人、寡兵の軍隊によって、大尉の戦闘団は崩壊していく。
 いつしかミヒェールゼン大尉は白兵戦に巻き込まれていた。ボルトガンを手放し、銃剣を引き抜いてグレイナイトに突き刺すが、かすり傷を負わせるどころか、銃剣の方が木っ端微塵になってしまった。大尉は使いものにならなくなった柄を投げ捨てると、誤射を承知でラスピストルをグレイナイトの頭部に向けた。赤いラス光線はパワーフィールドに吸収され、消えてなくなった。

CA3A0170a.jpg

 ハルバードで切り刻まれた無線兵がどうと倒れ、プラズマガン射手は真っ二つになった自分の武器から発せられる熱で絶叫している。遠くではラットリングの狙撃分隊がドレッド・ナイトの放った火の玉(とでもいうべきもの)で火だるまになり、噴進機関砲はバチバチとはぜていた。
 大尉は身を翻して駆け出した。“鈍色の騎士”に挑んだ代償を痛感しながら、部下だった骸の山を背に、荒れ果てた土地を一目散に。



 結局、あの神殿は何だったのだろうか。あそこには昔、村があったという。なれば、そのオアシスの村はいったいどのような運命を辿ったというのだろうか。
 ミヒェールゼン大尉が生き残る術はもはやなかった。懲罰部隊に入れたとしても、“鈍色の騎士”は自分を求めてやって来るだろう。
 「構え!」
 いくつかの焦げた穴があいている棒を背にして、大尉は自虐的に思った。
 ……俺を処分して“鈍色の騎士”に慈悲を乞おうというのだろうが、お前等も“鈍色の騎士”に目を付けられているんだ。俺は知っているんだぜ。お前らが今まで、政治局員の目を盗んで何をしてきたのかを。
 「狙え!」
 ふん。糞ったれの出世主義者め。案内してやろう。地獄にな。
 ミヒェールゼン大尉は1人、ほくそ笑んだ。

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