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シュコルダの血-110417-

  • 2011/04/29 15:24
  • Category: 小説
 第17回定例会の3vs3戦をモチーフにした小説です。レポートはこちらhttp://factryworldrottweil.blog11.fc2.com/blog-entry-80.html#more






 ドボイロクⅣ征戦で重要な戦場の一つが、河畔に栄えるシュコルダ市である。
 採掘が主な産業であるドボイロクⅣにおいてシュコルダ市は交通の要衝として知られており、それ故に<帝国>側と<反帝国>側は激戦を繰り広げている。

 春の訪れと共に、<反帝国>側のいくつかのケイオス・スペースマリーンの戦闘集団が大攻勢作戦を開始した。あるオルク族長の支援も取り付け、破竹の勢いで反逆者たちはシュコルダ新市街を占領していく。
 しかし、それに続くシュコルダ旧市街は路地が幾重にも入り組んでおり、<帝国>側は防衛しやすい地点まで計画的に退却しただけだった。
 ケイオス・スペースマリーンの進撃は止まり、その代わりに<帝国>側のガーディアン・オブ・テクニクス戦団をはじめとする混沌討伐軍が反撃を開始した。その戦列にはオルク傭兵を携えたタウ・エンパイアの姿もあった。
 <帝国>側はタウ・エンパイアが<帝国>の版図を削り取ろうとしていることに気付いていた。が、敢えて黙っていた。オルク傭兵がいつか裏切るであろうことも。

 今は全力でケイオスに対抗すべきなのだ。多少の犠牲はやむを得なかった。


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 待機中のケイオス・ライノの車内で、ケンナード卿は捕虜にしたシュコルダ市民の前にいた。
 捕虜は若い男と女だった。皆が戦っている中、自分だけ逃げ出したのである。ケンナード卿にとって、憎むべき行為である。敵の行為と言えども、憎むべき行為であることに変わりはない。
 同じ赤黒い旧式なパワーアーマーを着た5人の背の高いバーサーカーが、小さく縮こまる捕虜を囲んでいた。ケンナード卿の纏うパワーアーマーも確かに赤かったが、銀河最硬を誇るアダマンチウム合金の表明が奇妙に赤熱していて、その上左腕は途中から白熱するパワーソードと化している。
 ケンナード卿が怯える若い男の首を悪魔化した左手で跳ねると、女は絶叫して逃げ場を求めた。噴き出す鮮血がバーサーカーのパワーアーマーを染め直し、ケンナード卿は左手に滴る生暖かい感覚に舌鼓を打つ。

 ヴァン・ケンナード卿は、もともとはインベイダー戦団の強襲分隊の同胞だった。しかし戦いに次ぐ戦いの日々を経るごとに血への渇望を抑えきれなくなり、ある日の奇襲作戦でたがが外れ、オルク共々同胞たちを斬り殺したのである。
 以来、ケンナード卿はインベイダー戦団から逃げるようにして銀河を渡り歩いてきた。十数年前にデスパルト卿に出会ってからは、その忠実なる僕として自身の勢力拡大を図っている。
 時の流れの中で、ケンナード卿のパワーソードは左手と一体化し、また異常に軽くそして丈夫になった。これで卿は血の神コーン元へ生贄を捧げ続けている。

 ケンナード卿が振り下ろした左手は狙い違わず女の頭を切り裂き、股までを一刀両断する。悪魔化した左手が白熱し、次の瞬間、女は大爆発を起こして四散した。細かな肉片がケイオス・ライノやバーサーカー、そしてケンナード卿自身にもまとわりつくが、誰一人としてそれを不快に思う者はいなかった。
 「血の神の御子等よ。もうすぐ、我らの独壇場だ」
 ケンナード卿は静かに語り始めた。汎用装甲輸送車両ケイオス・ライノは僅かにエンジン音を響かせている。
 「敵は薄い。だが侮るな。射程の長い奴がいる」
 「忌まわしきホワールヴィントか?」
 バーサーカーの一人が唸る。デスパルト卿と協力関係にある戦闘集団ドライジーネ・バタリオンが欲して止まない自走ロケット砲のことを言ったのだ。
 「忌々しいことに変わりはないが、ひ弱な異種族の歩兵だ」
 「あのタウと名乗っている、干物のような連中か」
 「そうだ」
 血の滴る音だけが、バーサーカーを制御している。ケンナード卿は重々しく答えてから、愛用のボルトピストルの装填レバーを引いた。
 「懐に入れば、小賢しいガードよりも切り刻み易いわ」
 ケイオス・ライノのエンジンが眠りから覚め、大きく伸びをする。バーサーカーは一斉にボルトピストルとチェーンソードの動作を確認し、グレネードをしこたま抱え込む。

 「血の神に血を捧げよ!」




 ガーディアン・オブ・テクニクス戦団の前線指揮官、第四中隊所属の工炉の主カリス・アンタレックは、装甲戦闘車両がたった一台しかいない、自分の選抜部隊を満足げに眺めた。
 配下には様々な色のスペースマリーンがいた。各々が好き勝手に塗っているわけではなく、所属部隊によってパワーアーマーの塗装が違うのである。
 その勇敢な同朋たちを纏めるカリスは本来、第四中隊長ではない。なぜ彼が指揮を採っているのか?理由は、GOT戦団の拠点星域による。
 現在、星域近辺で裏切者が艦隊強襲をしかけているため、少しでも手の空いている中隊長は総員でコトに当たってるのだ。カリスが崇拝に近い畏敬の念を抱くルフト・マーシレス戦団長は、ドボイロクⅣもまた重要であるが、それ以上に拠点惑星サンクティアの防衛は重要でありと考えていた。

 ルフト・マーシレス。身体の九割近くが機械化され、年齢で彼に勝てるのはヴェネラブルドレットノート位だという。
 戦団どころか拠点の工業惑星であるサンクティアの聖工場群をも圧倒的采配能力でまとめあげる古強者であり、また自らの聖務を人類の技術保全及び異種族の技術解析、そして兵団時代の裏切者共の浄化と定めている。(ダークエンジェル戦団ほどではないが、GOT戦団も遥かなる大昔の裏切り行為を恥じていた)
 やむなくドボイロクⅣから中隊長および当地に展開する選抜部隊の半数を呼び戻した戦団長マーシレス。それでも彼は、ドボイロクⅣの重要性を忘れた訳ではなく、残された選抜部隊の指揮を戦団内の誰かに委ねることにした。
 つまり、現場指揮できる人材がカリスしかいなかったから、彼が選抜部隊を指揮しているのである。

 もちろん、カリスは知っている。それを差し引いても尚、カリスにとっては名誉なことであった。

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 「すべての準備が完了しました、工炉の主」
 ミドルトン軍曹が報告する。彼は、レイザーバックに乗車する分隊を指揮していた。
 「よろしい。作戦を開始する」
 軍曹は頷くと、後部ハッチからレイザーバックに乗り込む。そこには数人の同朋がいた。彼が席につくと同時にハッチは上昇し、定位置に収まる。
 (……タウとやらは信用できんな)
 カリスのすぐ後方で、緑色のアーマーに身を包んだタウ軍の部隊がパルスライフルの準備をしていた。
 彼らは自ら協力を申し出たが、その癖終始非協力的な態度を取り続けた。極めつけは、タウ軍オルク傭兵の存在である。
 (奴ばらは恐らく、裏切る)
 確信があった。間違いなく異種族がドボイロクⅣを攻略しようとしていると。交渉で愚者を演じたカリスにはそれがよくわかった。
 頼みの綱は同じスペースマリーンの友軍だが、カリスはその紫色の戦団をよく知らない。この三者の間に不和が生じるのは、恐らく確実だった。
 (……準備不足なのは、否めないな)
 カリスはふと、不安になった。交渉時間を増やせばその不安をぬぐい去る事もできただろう。しかし、これ以上待てばケイオスの台頭を許すことになる。仕方のない選択だった。
 レイザーバックのエンジン音が、一際高くなる。出撃は近い。



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 <帝国>側が前進を開始したと見るや、オルクは一斉に走り出した。口々に何かを喚きながらスペースマリーンに向かっていく。
 ルータ・ボゥイが手当たり次第に弾をバラ撒き、ケイオス・プレデターが低速で走行しながらオートキャノンを発砲する。プレデターが撃つ度にその砲身が大きく後退し、砲塔後部のハッチから熱い空薬夾が排出されて地面に転げ落ちた。
 「ふん……壁役には最適だな」
 ケンナード卿は危険などどこに吹く風といった顔で、ケイオス・ライノの上部ハッチを開け放っていた。敵の砲弾が飛来すれば、一撃で車内のバーサーカーたちは死ぬだろう。もっとも、バーサーカーはそんな些末なことなど、気にもかけないが。
 卿の位置から見えるオルクは、ガスマスクのようなものをつけて気取っている連中だった。それでも向こうにいる別のオルクよりは、まともな装備だ。
 「しかし、忌々しい。異能力者がいるとはな」
 ガスマスクをつけたオルクたちのすぐ後ろに、緑に輝く杖を携えた一際大きなオルクがいた。ワープヘッドと呼ばれる異能力者だ。しきりにおかしな光線を目から発射しているが、あまり上手くいってないようだった。
 卿が野蛮な種族をしばらく観察していると、ついにワープヘッドが緑色に光り輝く玉をつくり出した。しかし近くにいた格下のくしゃみで、ワープヘッドはうっかり玉を味方の上に落としてしまう。
 「なかなか面白い茶番ですな、ケンナード卿」
 バーサーカーの一人、アーデンがくっくと喉の奥を鳴らした。緑色の腕や足が乱れ飛び、野蛮なグリーンスキン共はあわてふためく。実に愉快な光景だ。
 血の神コーンはサイキック能力を嫌悪している。当然、コーン神を崇拝するバーサーカーたちやケンナード卿も小馬鹿にしていた。
 向こう側でオルクを盾にしているブラック・レギオンも、異能力者であるソーサラーが戦闘集団を率いている。ケンナード卿にとっては気に入らない。しかし、この星を穫るのは我等が血の神とデスパルト卿である。彼らはどのみち多大な血を流してこの星を去るのだから、デスパルト卿もケンナード卿も干渉しなかった。
 そのとき、いくつかの誘導ミサイルがオルクに飛び込んだ。あのタウ・エンパイアという種族の兵器である。



 誘導ミサイルが命中しても、スペースマリーンは誰一人として歓声を上げなかった。射手が、漁夫の利を狙う異種族だからである。
 黙々と前進を続ける<死の天使>たちは、ボルトガンの重みを有り難みながら異種族と反逆者を呪った。

 「軍曹、オルクの一群を発見しました」
 レイザーバックの整頓された車内で、車長ユルゲンスがミドルトン軍曹に伝える。
 「同朋ユルゲンス、奴らをこちらに到達する前に撃滅する。撃て」
 車体上部に載せられたツインリンク・ヘヴィボルターの基部や弾薬庫のせいで、車内は普通のライノより狭かったが、ミドルトン分隊にとっては十分である。
 二連装の噴進機関砲から勢いよく排出される薬夾はガラガラと心地よい音を立て、その度にオルクは倒れていく。
 「友軍から通信。敵戦車確認。車種はデストラクター」
 車長ユルゲンスが新しくもたらされた情報をミドルトン軍曹に伝える。
 「ブラック・レギオンか?」
 「ドライジーネ・バタリオンです」
 戦闘集団ドライジーネ・バタリオンは攻城戦に長けたアイアン・ウォリアーから派生した勢力である。戦車戦に長けているばかりか、損耗した戦車を敵味方関係なく回収することで有名だった。しかも、回収作業を砲弾飛び交う戦闘中に行うのである。
 「要塞の脇に寄せろ。この車両を渡すわけにはいかない」
 ヘヴィボルターではデストラクターに太刀打ちできない。逆にオートキャノンはレイザーバックの装甲を軽々と撃ち抜く。仕方のない決断だった。
 そのとき、遠くの廃墟が点滅した。即座にミドルトン軍曹は対戦車火器の一斉射撃であると直感したが、既に時遅く十数発の猛烈な衝撃を喰らったのである。
 「脱出!同朋ユルゲンス、ハッチを開けろ」
 ユルゲンスからの返答はなかった。運転室には二人の戦車兵が乗っているはずだが、ドアの向こう側には赤い血とパワーアーマーの残骸しかなかった。いくつかの実体弾が、車長と砲手を葬り去ったのである。
 ミドルトン軍曹が非常レバーを引いてハッチを開けると、微かな煙が車外に流れ出た。
 「“工炉の主”へ、こちらミドルトン分隊。敵の対戦車部隊を確認。レイザーバックは大破、同朋ユルゲンス以下乗員は戦死、我が分隊は損害なし」
 ミドルトン軍曹は歯痒い思いで、アンタレックに状況を伝える。
 ミドルトン分隊の同朋はすぐさまレイザーバックの周囲に展開し、オルクに向かってボルトガンの精密射撃を繰り出した。曳光弾がきらめき、緑の血肉を粉砕していくが、オルクは確実にミドルトン分隊を目指していた。

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 恐ろしい叫び声をあげながらオルク共がドタドタと走り込んで来る。不恰好な銃を乱射しながら、緑の野獣はミドルトン分隊に迫っていった。
 「皇帝陛下の為に」
 ミドルトン軍曹はグレネードを放り投げると、突っ込みをかけてきたオルクの喉元をチェーンソードで切り裂いた。
 ドン。
 グレネードが破裂し、オルクの手足が千切れ飛ぶ。その隙にミドルトン分隊の同朋はボルトガンをコンバットブレイドに持ち換え、オルクを迎え撃った。
 とはいえ、いくらスペースマリーンでも物量の前には無力に等しい。ミドルトン分隊は数に勝るオルクのボゥイ共にすぐ包囲され、劣勢となる。
 ミドルトン軍曹のボルトピストルの至近距離射撃で数人のボゥイがもんどり打って倒れる。しかし非情にも、飛び込んできたオルクに撃つべきボルト弾は、弾倉に残っていなかった。カチンと引き金が悲しく空回りする音だけが、ミドルトン軍曹の聴覚に響く。
 そのオルクの驚くべき早さに、ミドルトン軍曹のチェーンソードは叩き落とされる。次の瞬間、軍曹の視界は緑色の血肉で一杯になった。
 「同朋ミドルトン、無事かね」
 血肉は消え去り、代わりに怯えて一歩退くオルク・ボゥイ共がそこにいた。ミドルトン軍曹は即座に理解した……視界の端で、巨大な赤い機械の鉤爪が何匹かのボゥイを握りつぶしている。
 ……そうだ。我々には皇帝陛下と、マーシレス戦団長、そして“工炉の主”がついているのだ。
 グレネードが空中に放り投げられる。何人かの同朋が、折れたコンバットブレイドの代わりに、オルクの肉切り包丁のようなチョッパでボゥイ共を切り刻む。
 ミドルトン分隊はもう、独りではない。カリス・アンタレックの選抜部隊が、軍曹の背中を推しているのだ。
 ミドルトン軍曹は憎き敵にボルト弾を叩きつけながら、チェーンソードを拾い上げた。

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 「踏み潰してでも前進しろ。スキンなどに構うな」
 ケンナード卿は苛立ちながら舌を噛んだ。たちまち口から鮮血が流れ出るが、この程度では衝動を抑えられないことも事実だ。
 ケイオス・ライノはデストラクターとオルク・ボゥイに挟まれて前進できずにいた。血の衝動に侵される彼らにとっては苦痛でしかない。
 「もういい、でくの坊め!」
 ケンナード卿は一声叫ぶと、ライノの上部ハッチを飛び出した。慌てて、しかし満足げにバーサーカーが後に続く。
 瓦礫の山を飛び越え、オルクを踏み台にして文字通り空を跳ぶと、卿は血の神を褒め称える。
 「血の神にィ!血を捧げよ!!」
 言い終わらぬ内にケンナード卿は邪魔なオルクを払いのける。それだけでボゥイは、苦痛に悶える間もなく破裂した。
 敵は、ターミネーターであった。どうやらインベイダー戦団の糞ではないらしい。一瞬、怯んだターミネーターはすぐさまストームボルターで卿の頭を狙う。
 すべてのボルト弾がケンナード卿の頭を粉砕したが、硝煙が晴れても卿の顔は先ほどまでと何ら変わっていなかった。
 「何かしたか?犬共」
 コーン神の御加護に感謝しつつ、ケンナード卿は自身と一体化した“血を啜るもの”を降り下ろしたが、狙われたターミネーターはさっと身をかわした。
 「生意気だ」
 ケンナード卿はさらなる攻撃を繰り出すが、ターミネーターは避け続けた。熟練の中の、熟練者であるようだ。
 「ハハハ、それでなくてはつまらぬ!悶えよ、犬!!」
 コーン神の恩寵を賜ったケンナード卿は、普通のスペースマリーンよりかなり素早かった。次第に鈍重なターミネーターは追いつめられていき、1人1人と切り刻まれていく。
 「面白い……面白いぞ!ハハハ、ハハハ……!!」
 最期のターミネーターを串刺しにすると、ケンナード卿は左手を引き抜く。まるで爆発したかのように、血が傷口から吹き出した。
 「ハハハ、ハハハ……!!」
 ケンナード卿の高笑いはいつまでも、いつまでも戦場を駆け抜けていく。

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 ガツン。
 猛烈な電磁パルスが、ケンナード卿を襲った。
 「な……!?」
 思わず頭を抱える、ケンナード卿。
 「くそ……何事だ」
 遠く離れた偵察機の残骸から“射程の長い干物共”が、バーサーカーに弾幕を張っているのだ。猛烈な弾幕である。ケンナード卿はすぐに、一歩も動けなくなった。
 「血まみれの卿よ、後方にも敵兵がいる」
 先ほど乗り捨てたケイオス・ライノは、ようやくケンナード卿の元にたどり着いていた。しかし、その背後にはタウ軍の伏兵がいて、こちらも烈火のごとき射撃を友軍に叩きつけている。
 「……ッ」
 悔しいが、このままでは白兵戦に持ち込む間もなく全滅する。それは、ケンナード卿にとって血の神への反逆と言える行為でもあった。
 「転進する。後方の干物を切り刻め」
 何人かのバーサーカーがもんどり打って倒れる。1人は再び立ち上がったが、2人はそのままだった。
 「……この埋め合わせは必ずしてもらうぞ。忌々しい新興国家め」
 傷付いた体を引きずりながら、ケンナード卿はケイオス・ライノの真っ赤なハッチの中に消えた。



 「“工炉の主”、敵が退却を開始しました」
 「……まともではあるようだな」
 カリスは独語した。トーチカの向こう側から聞こえてくる交響曲は、緻密な指揮の元に成り立っているようだった。
 「レイザーバックは如何致しましょう」
 「直ちに帝国防衛軍へ連絡し、アトラス回収戦車の出動を要請しろ。これは、まだ治る」
 命令を受けて、ミドルトン軍曹はシュコルダから近い位置にいるはずの連隊に無線を飛ばしている。
 戦闘は下火になりつつあった。退却するブラックレギオンに銃撃を浴びせている指揮下のコンバット・スカッドを見ながら、カリスは思う。
 (戦線はしばらくの間、ここで膠着するな)
 少なくとも、ドライジーネ・バタリオンに新たな戦車を与えるという最悪の事態は免れた。それだけは確かである。
 (ここは帝国防衛軍に引き継ぐべきだな。私には、……他の任務があるのだから)





 「……」
 荒廃したシュコルダ旧市街の中で、ぽつんとそびえ立つ要塞があった。
 帝国防衛軍がよく使う形式の塔型トーチカで、ここにあるのも反乱を起こした惑星防衛軍が輸送機で投下したものだ。
 しかし、要塞に装備されていた兵器はすべて撤去されて、ぽっかりと穴が空いていた。
 その要塞の最上階……大型アンテナのある屋上に、影がいた。先ほどまで続いていた激戦を、彼はここからつぶさに観察していたのである。
 「……興味深い」
 そのスラリとした容姿の人物は、一言呟いた。一瞬、シュリケンカタパルトが反射して煌めいたが、すぐに影ごと消え去った。


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Comment

龍崎

面白かったです。

こういう雰囲気のレポートって良いですね。
  • URL
  • 2011/04/30 09:32
  • Edit

澱葉

設定がすごすぐる(;゜ロ゜)
(´Д`;)ヾこいつぁうちの子らももうちょっと設定考えねば、だ。

しかし、ラクさんの書くストーリーは情景とか惹きつけるのがホントにすごいとおもう。

ラク

>>龍崎さん

ご清聴、感謝致します。

あなたのそのお言葉が、私のモチベーション・やる気・アレその他につながっています。とてもありがたいです!


>>澱葉さん

すいませんすいません干物と言ってすいませんタウ人の皆さん顔色が悪いものでついつい。

今回の小説にはKさんのガーディアン・オブ・テクニクス戦団の設定も使用させてもらいました。
ヘッドクォーターの名前とかがありますと、このように勝手に話が展開していきますw

まだまだ文章は粗が目立ちますので、これからも学業に影響しない範囲で磨いて参ります。
  • URL
  • 2011/04/30 22:56
  • Edit

K

全部読みました。

自分の設定がここまで物語に食い込むのは初めてなんですごいうれしいです。

今後も楽しみにしてます。
  • URL
  • 2011/05/06 17:37

くーがー

自分の設定が生きてくるのってやっぱり良いですね。
私もオリジナルの方舟設定作りたいんですが、肝心のヘッドクォーターがアレだと…
  • URL
  • 2011/05/09 00:00
  • Edit

ラク

>>Kさん

頂いた資料を元に、というかほとんどそのまま載せてあります。確固たる設定があるので、カリスさんは勝手に動いていってくれました。

物語の進行上、適当に私が名付けたミドルトン軍曹は……ロイヤルウェディングの事が頭のどっかにあったんでしょうね。あとからアリャマと思いましたよ(笑)

ドボイロク?征戦小説はなるべく、書いていこうと思います。これからもよろしくお願いします。


>>くーがーさん

いやいやいや到着するまでの辛抱ですよ(笑)

とりあえず設定だけダーッと作っておいて後から当てはめていくとか、なんちゃってファーシーアを無視する方向で往かれてはどうでしょう?
  • URL
  • 2011/05/11 17:53

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