スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スタンガード・ヴェテラン

  • 2012/03/05 14:53
  • Category: 小説
 久しぶりに書いた短編小説です。

 オルクの視点でスタンガード・ヴェテランを説明する……というような物語です。


 大族長ガヴラトはいらいらしていた。遅い。来るのが遅い!
 ここはとある惑星の、とある大陸にあるごく普通のとある丘だ。ゴフ氏族の出身である大族長ガヴラトは、この丘に陣取る人間野郎をコテンパンにしようと画策していた。しかし、ある事情のせいで、丘のふもとに1週間も釘付けになっていた。大量のスラッガボゥイとデカい大砲を投入しているのに、登れないのだ。
 ズドーン、ズドーンとロッバが巨大な砲弾を空高く撃ち上げる。鉄と火薬の塊は勢いを増しながら丘の頂に衝突し、土を吹き上げた。丘はすでに形が変わるほどの攻撃を受けていた。
 大族長ガヴラトは陣地(丘のふもとを崩しただけのもの)からツインリンク・シュータをぶっ放す。あっという間に弾は赤い空に呑み込まれていった。
 「おい格下!ボグドゥスの野郎はまだか!」
 相当お冠である。ノブの1人が首を振って、ボグドゥスがまだ来ていないことを伝えた。奇妙なことに、どのオルクももともと悪い姿勢をさらに酷くして陣地をうろついている。
 「こんチキショウ!舐めやがって!」
 喧嘩が始まりそうだった。誰も彼もが頭にカチンときている。仕方のない事情だったが、ゴフ氏族にとってそれは致命的なことだった。
 「ボス!来やしたぜ」
 ノブの1人が叫んだ。しばらくして、30人のオルクが陣地に入ってきた。
 大族長ガヴラトは胡散臭そうな目で彼らを眺め回す。実際彼らの服装やら雰囲気は、ゴフ氏族に理解できないおかしなものだった。皆さん地味にカラフルでグリーンな服を着込んでいらっしゃる!
 「よぉボグドゥス、えらく遅いじゃあねぇか。あそんでたのか?」
 大族長ガヴラトはそう吐き捨てると、一団の中で一番大きくて胡散臭そうなツラのオルクを睨んだ。そのオルク……名をボグドゥスというコマンドゥ隊長は、飾り気のないゴーグルを目に被せていた。
 「ちぃとばかしシゴトがあってな」
 スクイゴスも脅える大族長の睨みに、ボグドゥスはなんら関心を示さない。
 「まぁいい。ピンク野郎共ぶっ飛ばしゃあ、おんなじこっただ」
 大族長ガヴラトが丘の頂を指し示した。
 「あすこに、人間野郎の堅ぇヤツがいる。ボグドゥス、連中をミンチにしろ」
 「そいつぁ豪勢な話だ。だがなんでてめぇで片付けねえ?大族長ガヴラトなら一揉みだろうに」
 「教えちゃる」
 大族長ガヴラトが指をバキリと鳴らした。ビッグガンの陣地から2人のノブがやってきた。泣き叫ぶ1人のグレッチェンを抱えている。
 「ダヴォフト、やれ」
 ダヴォフトともう1人のノブがグレッチェンを持ち上げる。そして、下げた。それから銃声が聞こえた。
 「な、わかったろ?」
 陣地から顔を出した僅かな間に、グレッチェンの首がもげてしまっていた。相当な射撃の腕である。
 「ガンの音が後から聞こえてきたな」
 「それがどうした、ボグドゥス」
 大族長は首を捻った。ボグドゥスが薄気味の悪い笑みを浮かべている。
 「なんかモンクでもあっか」
 「いいや、別になんもねぇ。要するに、あのクソ共を始末すりゃあいんだな?」
 「そうよ。始末したら俺様が出る。残りは皆殺しだ」
 「報酬は?」
 大族長は少し考えた。
 「その堅ェヤツらを始末したら、そいつらのガンや装甲バンはおめぇらのもんだ。それでいいな、ボグドゥス」
 「いいだろ。話にのったぜ」
 ボグドゥスとその仲間が丘を下り始めた。
 「おい、どこに行きゃがる」
 「コマンドゥにゃコマンドゥなりのやり方ってのがあんだよ。大族長よ」
 ボグドゥスがまた薄気味悪い笑顔を見せた。


 深夜、ボグドゥスたちコマンドゥ部隊は丘の中でもっとも傾斜が酷い、崖になりかけている場所にいた。丘の反対側では大族長ガヴラトのいくさ組が猛烈な射撃を繰り出している。恐らく命中する弾は1発もないだろうが、目くらましにはなるはずだ。
 「お頭、ここでいいんですかい」
 コマンドゥ隊員がボグドゥスに聞いた。ボグドゥスは巨大な斧を2本持っている。
 「紐を貸せ。俺様が一番槍だ」
 コマンドゥ隊員がボグドゥスの腰ベルトにワイヤーを巻きつけた。別のコマンドゥ隊員がお頭の背中を軽く叩くや否や、ボグドゥスは猛烈な勢いで崖を登り始める。2本の斧を交互に振り回し、崖に食い込ませて登るのだ。足は使わず、腕の筋肉だけで50mを登りきると、ボグドゥスは周囲を注意深く観察する。近くに敵はいない。都合のいい切り株がある。
 ベルトからワイヤーを外すと、ボグドゥスはこれを切り株に巻き付けた。何回かワイヤーを引っ張り、ビクともしないことを確認すると合図を出した。
 コマンドゥ隊員が一列になり、ワイヤーを頼りに登ってくる。5分もかからないうちに、全コマンドゥ隊員が整列した。
 「よし、敵を捜せ」
 10人のコマンドゥ隊員が、2人1組になって辺りに散らばっていった。さらに戦闘騒音が激しくなっている。ガヴラトは相変わらず無駄弾をバラまいているようだ。
 ビッグシュータやスラッガ以外の射撃音も聞こえる。ボグドゥスには、それがヘヴィボルターとラスガン、そしてボルトガンの集中砲火に思えた。
 20分ほど時間がかかった。全員が戻ってきて、敵の位置を詳細に報告する。
 「つまり、ここか」
 ボグドゥスは地面に描いた地図を指した。
 「どこですかい」
 「あっちだろ」
 「いやこっちだ」
 コマンドゥ隊員は隠密行動や暗殺といったゲリラ戦術を習得してはいたが、大半のおつむは弱かった。まぁ、ボグドゥスのおつむが異常とも言えるから仕方ない。
 「いいからついてこいや、ガキ共」
 ボグドゥスは斧を交差させると、音もなく進んでいった。

 やがて、ボグドゥスとコマンドゥ隊員は、例の“堅ぇヤツら”の背後に回り込むことに成功した。
 7人のスペースマリーンだった。いずれもボルトガンに箱型弾倉を装着しており、足元には空薬夾が積み上がっている。大族長ガヴラトいるの方向に集中しているらしく、15m後ろにオルクがいることに気付いていないらしかった。
 ボグドゥスはハンドサインで2人のコマンドゥ隊員に部隊を分割することを伝えた。3つの部隊で、3方向から挟撃するのだ。
 ボグドゥスはスラッガの消音器を確かめた。相手がスペースマリーンともなれば、音を消しても1発目で気付かれる。取り外すと、腰のポーチにしまい込む。そして、目を守るゴーグルを最適な位置に調整した。
 ボグドゥスの指揮するコマンドゥ隊員は9人。そのうち2人がビッグシュータを装備している。側面に回り込んだコマンドゥ部隊には、それぞれ1丁のバーナを持たせた。
 伝令として迂回部隊に随行させていたコマンドゥ隊員が帰ってきた。展開は無事に完了した。
 敵はやはり気付かない。単発で狙い撃ちを続けている。そのとき、スペースマリーン全員が一斉に弾を交換した。
 今だ!
 「かかれ!」
 銃撃で戦場が昼間のように明るくなり、コマンドゥ隊員は四方八方から飛び出した。
 ところが銃弾はボグドゥスからスペースマリーンにではなく、スペースマリーンからボグドゥスに向かって襲いかかった。
 スペースマリーンが全員こちらを向いている。そして、ボルト弾をコマンドゥ隊員に注ぎ込んだ。ビッグシュータを持つ隊員がもんどりうって倒れ、飛び出した隊員はそのまま地に墜落する。
 ボグドゥスは頭に酷い痛みを感じ、膝をついた。あまりの激痛に手で頭をかきむしると、さらに痛みが増した。ふと手を見ると、溶けている。いや、溶けた頭蓋骨が手にくっ付いているのだ。
 「ああああああアアアアアアァァァァ!」
 ボグドゥスの耳が聞こえなくなる。ガスのようなものが漂っているらしく、鼻も効かなくなった。ゴーグルのおかげで目は無事だったが、視野に写るのは苦しみにのた打ちまわるか、ピクリともしないコマンドゥ隊員の姿だった。
 オルクは、多少の痛みには動じない。腕がもげようが、腹が裂けようが、戦い続けることができる。それが揃いもそれって傷口を押さえているではないか。ガスだ。このガスのせいだ。
 ボグドゥスの目が殺気に満ちた。
 「チキショウめ!やりやがったな、人間野郎がァァァァ!」
 死んだ隊員からビッグシュータを剥ぎ取ると、ボグドゥスはどたんと戦場に躍り出た。敵は左右にいるコマンドゥ隊員を掃討している。チャンスだ。
 ボグドゥスは弾倉を交換している真ん中のスペースマリーンに狙いを定めて突撃する。
 「グァァァァァァァグ!」
 スペースマリーンが弾倉を取り落とした。
 ポン。
 そんな感じの音がボルトガンの下部から聞こえ、そこからグレネードが弓なりに飛んできた。そして、ボグドゥスは吹き飛ばされた。
 地面に叩きつけられるまでの時間が、とてつもなく長かった。なぜ失敗したのか……ボグドゥスにはわからなかった。300の戦場で5000の敵兵と戦い、討ち取ってきたというのに。
 満天の夜空だった。不意に、ボグドゥスからなにかが打ち上がった。
 信号弾だ。赤い信号弾が、夜空にきらめいた。グレネードの衝撃で、ポーチにしまっておいた信号拳銃が破裂したのだ。作戦成功の合図だ。
 遠い場所で大族長ガヴラトとその手下共が雄叫びをあげながら突撃し始めた。またインペリアルガードと、コマンドゥ隊員を全滅させたスタンガード・ヴェテラン・スカッドが圧倒的な迎撃射撃を開始していたが、もうボグドゥスにはなにもわからなかった。
 ただひとつだけ、ボグドゥスにわかったことがあった。

 ……そうか。

 ヤツらは、30000の戦場で、500000の敵を殺してきたんだ……。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://factryworldrottweil.blog11.fc2.com/tb.php/111-02ced984

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

絶望先生暦 昭和日めくりカレンダー

Utility

プロフィール

ラク

Author:ラク
 ミニチュアゲームな話題を紹介していくブログです。

Twitter

laku1939 < > Reload

来訪者

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。