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111016 ゴルドゥバ村

  • 2011/11/30 21:15
  • Category: 小説
 第24回定例会での戦いをモチーフにした小説です。

 インペリアルガード、第204山岳猟兵連隊ゴットシェード戦闘団指揮下、バウマン戦闘群の戦いです。敵はエルダー軍。

 バトルレポートはこちら。

http://factryworldrottweil.blog11.fc2.com/blog-entry-103.html
 朝日が眩しい。若い将校は、思わず陽に手をかざして崩れた塔を見た。

 ここは、この星では典型的な農村だったという、ゴルドゥバ村だ。燃え残った煙突と暖炉だけが、その豊かな村の面影を遺している。ここを、戦争が通過していったのだ。村があったことを覚えている人は皆死に、知っている者も記号としてしか認識していない。

 惑星ファントリアの過密都市出身でやっと27歳になったユリウス・バウマン大尉は、彼が指揮する数個小隊を、名前すら喪われた農村へ前進させた。
 バウマン大尉は、標準的な歩兵分隊に紛れていてもも違和感がないほど目立たない男だ。頭に巻いている包帯が、煤で薄汚れている。使い古した将校帽を被らなければ、遠目には一兵卒に見えるはずだ。
 大尉は目が良く、“軍曹”の形見のボルトピストルを抜けばいつでも百発百中だった。彼はその“軍曹”の名前をすでに忘れてしまっていたが、最期の表情だけは覚えている。あれは、10年も昔の話だ。

CA3A0266s_20111130210730.jpg


 指揮班の面々と共に、土塁の手前で待機していると、ブロイッヒ少尉からの連絡が入った。指揮下の小隊だ。
 「大尉殿、オルクはいないようです。死体だけが残っています」
 バウマンと同郷で、まだそばかすの目立つ21歳のギルベルト・ブロイッヒは少尉になってから数週間という坊やだった。士官学校を出てきた蝋人形といった方が良いだろう。危なっかしいので、将校帽は被らないようにとわざわざ指示した。
 「生きているオルクはいるか」
 「何一つ動きません」
 野蛮な獣の死体の脇を、ガードたちが通り過ぎる。どのラスガンの銃身も下を向いていた。その先端には銃剣が取り付けられていて、ときどき緑の野獣共を突き刺しては息絶えていることを確認する。

 これは、バウマン大尉とその部下達にとって危険な作戦のはずだった。
 「59高地のゴルドゥバ村に立つ2つの塔を占拠し、砲兵観測所を設け主戦線の敵オルク軍を砲撃せよ。敵の攻勢が認められる場合、可能な限り撃退せよ」
 と、いうのが命令だ。普通はこの文章のように簡単に済む戦闘にはならないのだが、何故か当該地点の「生きている」オルクは一人残らず消えていた。
 不可解ではあったが、邪魔がない分やりやすい。迫撃砲など、いくつかの部隊は後衛として行軍中だったが、バウマンは早いうちに目標を確保するべきだ、と考えた。幸い、弾着観測を行うトラヘセル砲兵中尉と数名の随行員が派遣されているので、もし敵に遭遇したとしても火力支援を期待できる。


 バウマン大尉は喉に張り付いているスロートマイク……直接、喉の振動を拾って声を伝えるタイプのマイク……を押さえて、シュヴァイガー中尉とブロイッヒ少尉にそれぞれ命令を伝達した。1個小隊につき1つの塔を取らせるのだ。
 シュヴァイガー中尉の小隊には2人の政治局員が派遣されていた。大抵は良くても3個中隊に1人しか派遣されないものだが、この戦線では重要作戦遂行の際に政治局員を激戦区に集中することが多々あった。実際、この試みは格闘能力で圧倒的に不利であるはずの人間を、何度も白兵戦で勝利させているのだ。
 バウマンは、シュヴァイガー中尉のいる右翼側で主攻勢をかけ、左翼側のブロイッヒ少尉には助攻、つまり攻撃支援任務を担当させた。少なくとも、シュヴァイガー中尉はブロイッヒ少尉よりも玄人である。政治局員2人は、彼の小隊に配属された。
 対戦車ミサイルランチャを装備する分隊が丘の上に陣取り、補給係の少年兵分隊がせっせとミサイル弾頭を運びあげる。ヘヴィボルター分隊は大きな着弾痕の中で弾薬箱を積み上げ、銃口を土盛りの陰から覗かせた。

 「無駄足だな」
 惑星ロットヴァイルの暗い共同住宅の出で23歳の、ギュンター・トラヘセル砲兵中尉が呟いた。
 バウマンは中尉の方を振り返る。
 「だがギュンター、もし敵がいたら、火力支援が必要だろう」
 「ああ、きっと山ほどいるのだろうな。あの塔の陰にざっと5000匹ほど」
 「僻むな。早く砲撃してもらいたいのは私も同じだよ」
 砲兵中尉は鷹よろしくサーボスカルを肩に留まらせていたが、どう見ても滑稽にであった。
 トラヘセルはふん、と鼻を鳴らす。指揮分隊員は武器を構えたまま、複雑な気分で成り行き見守っている。バウマンとトラヘセルは友人である前に、あくまでも大尉と中尉なのだ。それを無視するように会話をしているので、周囲は気が気でない。
 ふと、バウマンは嫌な気分になった。
 「どうした、ユリウス」
 「いや、なんでも」
 「お前はいつもそうだな。顔に描いてあるから分かり易い」
 バウマンは顔をしかめて、双眼鏡を覗いた。嫌な空気だ。
 「どうも、よくない」
 「よい戦争があったなら、俺はお前に賛同するよ」
 「そうじゃない。一発やりそうな雰囲気だ」
 「悪かった、俺が言い過ぎた。お前と喧嘩しても……」
 「馬鹿、違う」
 バウマンはトラヘセルをたしなめた。
 「敵がいる……だが、オルクの気配はない」
 戦場で15年を数えるうちに、バウマンは第六感が優れるようになっていた。これは、帝国の中ではとりたてて珍しい能力ではない。戦場で長生きするためには必要不可欠なのだ。むしろ、長生きした者だけが身に付けている、と言った方が適当だろう。
 バウマンの言葉を裏付けるかのように、突如、猟兵たちの正面に未知の兵団が現れた。
 「なんだあれは」
 トラヘセルが驚く。バウマンは一瞬も躊躇わずに、射撃命令を下した。
 猛烈な弾幕。ヘヴィボルターだけでなく、バウマン大尉付き指揮分隊の狙撃兵も射撃に加わっている。
 たちまち数人の敵がもんどりうって倒れるが、バウマンは手を抜かぬ。
 「ブロイッヒ!接近して対戦車弾をぶち込め!」
 『承知!』
 蝋人形少尉の小隊は互いに援護しつつ、土塁の左右を駆けていく。敵は押されているようだった。

CA3A0270d.jpg

 「対戦車分隊に奴らを撃たせろ。エルダーだ!」
 エルダーは、きらびやかな装甲服を着ていた。敵の射程は短く、こちらのヘヴィボルターに反撃できない。
 命令を反芻した少年兵の伝令が、丘に向かって走り出す。程なくして、伝令が帰ってきた。
 「大尉、大変です!対戦車分隊の前面に敵兵がおります。クニツキ伍長が狙撃されました!モツァー兵長が指揮を代わっています」
 バウマンは驚いた。
 「クソ、レンジャーだな。モツァーに狙撃兵を撃てと伝えろ」
 「了解しました」
 伝令は慌てて駆けていく。間髪入れず、指揮分隊のいる土塁の近くで地面が持ち上がり、掘り返した。
 「世も末だな。まだ12歳の女の子じゃないか」
 土塁に体を預けながら、トラヘセルが呟いた。バウマンは既に、次の行動に移っている。大尉は昔の自分を一瞬だけ思い浮かべ、それから双眼鏡で周囲を見渡した。
 「シュヴァイガー、そっちの様子はどうだ。こっちからは見えん」
 彼の小隊は、見張り塔の向こう側にいた。バウマンが無線で問いかけているうちに、塔の基礎である岩山の陰から、当のシュヴァイガー中尉が現れた。
 「おい、誰が退却していいと言った!」
 『小隊員が敵の正確な砲撃を受けています。ちっとも前に進めないので、迂回する途中です』
 「政治局員殿は何と言っている」
 『賛成しておられます。これから回り込んで、観測員を始末します』
 「よし……気をつけろ」
 無線は切れた。
 「ところで砲兵中尉、エルダーは砲撃の際に弾着観測をするのか」
 大尉が問うと、砲兵中尉は肩をすくめて見せた。
 「ところで大尉さん、悪い知らせだ」
 「どうした」
 「砲兵支援は無い」
 バウマンは憤った。トラヘセルはそれをなだめる。
 「主戦線で手一杯なのだ。今しばらくは無理だ。敵の攻勢だよ」
 相変わらず射撃は続いていた。ブロイッヒ小隊が敵歩兵に肉薄して対戦車弾まで撃ち込んでいるというのに、戦線は膠着しそうだった。
 「ホガート管制官」
 バウマンが宙軍地上管制官を呼ぶ。ヴァルキリー輸送機で、敵の背後に分隊を降下させようというのだ。
 「地点59-6gにレーマン分隊を降下させろ」
 ホガート管制官は直ちに指示を下した。多連装ロケットランチャを装備した輸送機が上空に現れ、敵部隊にロケット弾を放つ。
 地上が火に包まれ、敵が見えなくなる。しかし、爆炎が消え去り、生き残った敵が射撃を浴びせてくると、バウマンはますますエルダーが嫌いになった。
 「くそ、ヘルハウンドを借りてくれば良かった」
 「どのみち上はケチるね。主戦線に必要だろう」
 「お前は早く敵砲兵を捕まえて黙らせろ」
 岩山の向こうから爆発音が響いてきた。敵の砲兵だ。
 「あれは砲兵ではないな。リーパー・ランチャだ」
 「どちらにせよ、倒さなくては進めない。歩兵だけでは歩が悪い。装甲部隊がいれば、押せるだろうが……」
 前方にいるエルダーに、サイキックパワーを使う輩がいて、それがブロイッヒ小隊の前進を押し留めていた。
 数回の散発的な爆発が起きた後に、決定打が撃ち込まれた。大爆発が小隊を直撃する。阿鼻叫喚の中、今度は迂回中のシュヴァイガー中尉にリーパー・ランチャの弾幕が降り注ぐ。彼の指揮分隊は、あっという間に消えた。中尉からの通信はなく、双眼鏡から見えるのは、周囲に転がるオルクと同じように横たわる中尉の姿だった。
 しかし、バウマン戦闘群がエルダーに与えた損害も多く、敵はヘヴィボルターの射程圏から後退を始めた。
 「逃がすな。ヘヴィボルターを前進させろ」
 ようやっとトラヘセルは亜式砲の支援を奪いとり、しぱらくすると戦場に巨大な砲弾が次々に飛来した。ブロイッヒ小隊は未だ戦意衰えず、さらに前進する。だがヘヴィボルター分隊の動きは鈍かった。2脚式のものは弾薬も含めそのまま二人で運べるのだが、3脚式のものはどうしても分解して運ぶ必要があった。
 右翼側からシュヴァイガー小隊と戦っていたであろうエルダーが姿を表した。岩山の向こうの砲撃は止まり、その矛先はヴァルキリーに向けられている。これでは、政治局員も生きていないだろう。

CA3A0273@.jpg

 地上を掃射しつつ降下ポイントを探す輸送機だったが、辺りは敵で満ちている。パイロットがようやっと目標を発見して旋回しようとした矢先に、コックピットが砕ける。直撃弾だ。
 ヴァルキリーはそのまま高度を下げ、無様に着陸する。パイロットは脱出しようとしたが力尽き、緊急降車したレーマン分隊は敵に囲まれた。
 大尉は青ざめた。
 「なんということだ、撃て!右翼のエルダーを牽制しろ」
 バウマンはヘヴィボルター分隊を再展開させ、ブロイッヒ小隊はレーマン分隊の救出を試みる。
 が、またしてもサイキックパワーだ。
 「畜生、まただ!」
 再三の爆発を受け、もはやブロイッヒ小隊は全滅に近い状況だった。ただ一人生き残ったブロイッヒ少尉は、持ち場を棄てて逃亡する。
 「おい、逃げるな、闘え!」
 バウマンの声は届かず、新米将校は大尉よりも真っ青な顔であたふたと戦場から走り去った。


 救出にきたブロイッヒ小隊が壊滅しても尚、レーマン分隊は墜落したヴァルキリーの翼下で撃ち続けた。四方八方をエルダーに囲まれていたが、ラスガンのエネルギーセルは充分だった。負傷したヴァルキリーのガンナーまでもが抵抗した。
 「軍曹、6時の方向に敵白兵戦部隊!」
 トリーヴィヒ伍長が叫ぶ。
 「手榴弾、手榴弾!」
 「押し返せ!」
 ヴァルキリーには、陣地を確保したときに必要になる予備弾薬が大量に積まれていた。数人の兵士がその中から破片手榴弾を取り出して、エルダーにこれでもかと投げつける。
 移動しにくい地形の上、大量の爆発物を投げつけられてはエルダーも伏せるしかなかった。
 「軍曹、長くは持ちません!」
 「それでも撃て、力を尽くせ!」
 レーマン軍曹に叱咤され、伍長と二人の兵はラスガンを構え、伏せた白兵戦部隊に猛射を加える。
 アルベルト・レーマン軍曹はレグレツェン出身、元機械工で24歳の、映画俳優のような目をした男である。兵として徴兵されてから早5年、今では戦車撃破章と戦傷章2つ、そして軍曹の階級章を持っていた。
 レーマンは分隊一の射手に、森に潜むエルダーを撃つように伝えた。
 「あれを殺せ。でなければ、我々の負けになる」
 「承知!」
 即座に兵がラスガンを構え、数発を撃ち込む。戦闘騒音の中に、消え入るような悲鳴が混じった。
 「軍曹、殺りました」
 何食わぬ顔で兵は報告する。レーマンは驚いて、双眼鏡で森を確認する。
 「手早いな」
 「あなたの受け売りですよ」
 レーマンは笑った。
 「トリーヴィヒ!煙幕弾を12時と6時に展開!」
 「了解!」
 伍長は手榴弾の代わりに煙幕弾を手に取り、手当たり次第に投げた。たちまち辺りは白煙で覆われ、空が消え、塔が消え、そしてエルダーが消えた。
 「退却!」
 生き残った6人の兵士は、負傷したガンナーを連れて後退を始めた。兵士たちはエルダーがいたところに手榴弾を投げつけ、運べるだけの弾薬を背負って、近くの土盛りの陰に逃げ込む。
 「制圧射撃!」
 弾薬を下ろし、ラスガンを構えた兵士は次々に赤いレーザーを撃ち込む。レーマンは1人の兵士にガンナーを任せると同時に、伝令任務も託した。


 「レーマン軍曹が後退許可を求めています」
 「目標地点の敵は」
 「仕留めましたよ」
 「そうか。……潮時だな」
 バウマンは当番兵にラッパを吹かせた。

 物悲しいメロディーの退却命令だった。





 「……第204山岳猟兵連隊、ゴットシェード戦闘団は未明から日暮れにかけて、強固な要塞線“ジッキンゲン・ライン”において強大な蛮族オルク軍の猛攻を破砕せり。我が方の損害は取るに足らず、敵蛮族の遺棄死体2000を確認、さらなる奮戦により……」
 ラジオから臣民向けの総督府発表が流れていたが、兵士は誰も注意していなかった。
 荒廃した街に残るホテルは前線司令部に代わっていた。3階が破壊されていて、何ヶ所の壁には大きな穴が空いている。
 バウマン大尉はやっとの思いで司令部を出た。報告と、補充申請だ。
 「どうだった?」
 トラヘセル砲兵中尉が道路の向こう側に立っている。彼のところへ行くには、行軍するベルゲン第786歩兵連隊の歩兵小隊をすり抜けて、さらに戦車回収車に挽かれないようにする必要があった。
 「ああ、軍法会議は免れるさ」
 「首の皮がつながったな。主張が認められて良かった」
 バウマンは悲しそうだった。
 「ブロイッヒの若僧は庇えきれなかった」
 「仕方がない。戦争だ」
 バウマンは頭を振った。近くで重迫撃砲が連続射撃を開始したらしく、地響きが伝わってくる。
 「私は寄せ集めの部隊を指揮することになった。半壊した第55連隊の1個中隊が主な戦力で、全て204に編入するとさ」
 「そうか。これでまた204にいられるな」
 二人は歩き出した。突如として周囲に銃声が響き渡ったが、バウマン大尉は近くにある憲兵指揮所の裏に注意を払わず、そしてギルベルト・ブロイッヒの名前を忘れながら、その場を離れた。


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